正縁寺の境内は新緑の季節となっています。育つ時期に雨が多かった為か今年は例年にも増して生き生きと緑が生茂っています。
緑の中で南天の白い花がひときわ目立ちます。正縁寺の境内では実が落ち新芽を出した南天があちらこちらにあります。どこででも育つ木とばかり思っていたのですが、なかなか育ちにくいとのことを聞いて驚きました。
南天は花のない季節には花として、秋を迎える頃には葉っぱが綺麗な赤い色になり、お正月には赤い実が仏様にお供えする花として重宝しています。
私共にとっても大変有難い南天ですが「難を転ずる」と言われ古来から縁起の良い木とされています。
現代でも、縁起物や厄除けとして、お正月飾りとして使われたり、松や竹とともにお正月の花として玄関や床の間に飾られることがよくあります。南天は、平安時代に薬用、観賞用として中国から伝来しました。。以降、長年に渡り鎮咳の生薬として、「難転(難を転じて福となす)」に通じることから、縁起木として親しまれてきました。
戦国時代には、武士の鎧櫃(よろいびつ、鎧を入れておくふた付きの箱)に南天の葉を収め、出陣の折りには枝を床にさし、勝利を祈ったそうです。
正月の掛け軸には、水仙と南天を描いた天仙図が縁起物として好まれていたようです。
江戸時代には、「火災除け」「魔除け」として、多くの家の庭に植えられていたそうで、こうした習俗は今も日本の各地に残っており、南天は家の鬼門の方角に植えられることが多く、正縁寺の鬼門にも南天を植えています。
先に記したように南天の実は、咳止め効果の高い生薬として、古くから利用されており、私も南天のど飴を舐めた記憶があります。
南天の果実、葉、茎、根が生薬となり、果実を乾燥させたものを「南天実」と呼び、「南天実」にふくまれている「o-メチルドメスチシン」に咳や喉あれに効く作用があるそうです。
先日テレビのクイズ番組で知ったのですが、お赤飯に南天の葉を添える習わしは、単に彩りや縁起物としてだけではなく、葉に解毒作用や殺菌・防腐作用があることから取り入れられた先人の知恵なのだそうです。
境内に沢山育つ南天について調べてみて改めて益々南天の有難さを発見し、この先も絶やすことなく大切に育てて行こうと思いました。