正縁寺の本堂の屋根の鬼瓦は大層怖い顔をしています。いかにもあらゆる事から守ってもらえるという信頼感を感じます。
鬼瓦の起源は、ギリシャ神話で有名なメドゥーサをシリアのパルミラ遺跡にある入り口の上に設置していた文化からきているそうです。
シリアではメドゥーサを使っていたのですが日本では鬼がその代わりとなりました。
共通するのは恐ろしいものを置くことで、さらなる恐ろしいことから守るという考え方です。
日本では古来、鬼をあえて味方に付けることで、その建物や家がまるごと守られ、安心して暮らすことができ、恐ろしいものを設置することで魔除けや厄除けになるとされてきました。
メドゥーサは入口に設置されていましたが、日本では家内安全や災害回避、無病息災などを祈る場所である「棟端」に設置したことがはじまりのようです。
昔の人は「鬼を味方につけて家を守ってもらう」という願いを込めて、鬼瓦を魔除けとして使用していたのです。
鬼瓦には魔除けとしての役割だけではなく「雨仕舞い」の役割もあるそうです。
雨仕舞いとは、雨水を排水させて棟の中に雨を侵入させない構造のことです。
棟の両端を鬼瓦で覆うことで、建物を雨水から守る役割をもっています。
鬼瓦には魔除けや飾りとしてだけではなく、建物を守るための重要な役割もあるのですね。
しかしながら怖い顔をした鬼瓦は隣近所を睨みつけているようで次第に敬遠される事が多くなった為、一般家庭では火災の延焼防止を願い、鯱・菊水・波・雲などの水や雨をイメージさせるもの、縁起のよい鶴や亀、子孫繁栄をあらわす蔓草(つるくさ)や雲竜、福を招く七福神などが人気がとなりました。
鬼瓦は屋根のどこに設置されているか、どのような形をしているかによって種類が分けられているようです。正縁寺の屋根には水蒸気で出来た雲を胴の部分にしている「覆輪付」と呼ばれる物もあり、そこに火災の防止の願いが込められている事が理解できました。
今回の投稿を作成する中で正縁寺の鬼瓦は、長年色々な意味でお寺を守り続けている事にあらためて気付かされました。